東京木材問屋協同組合


文苑 随想

原木(丸太)商売盛衰記(5)


カナダ米国の生産地視察

白坂 鐘蔵



 先月号では南洋材の取り扱いについて記述させて貰ったが現地を視察したのは1度しかなかった。本業は父の時より米材であったので出材地であるカナダやアメリカへは何度か視察に行っている。印象に残るのは今より36年前の昭和43年6月16日から7月1日迄,元林材新聞の編集主幹をしていた大石真人さんが呼び掛けて,木材関係の若手で原木,製材,仲買業者の団体であった木材同友会のメンバーで,米材産地視察をしようではないかと話が出て,初めて視察に行ったのが今でも頭の中に種々と残っているので,今月は断片的な記事になると思うが述べさせて貰う。
 メンバーについては別紙に記載されている様に総員23名で3班に分かれ,1班は東京材木商協同組合(材商)の組合員で,当組合とは特売会で特に関係があり,元理事長で惜しくも若くして亡くなられた(株)上菊商店の小野坂陽介さんや,その後を継いで理事長になった篠崎芳郎さんもおり,2班は新東京木材協同組合の組合員で編成され,3班は私が班長になり,三新木材の早川欽也さんや平住製材工業の伊東秀晃さんらが参加しておりましたが,当時は何れも年代が若く,皆さんも種々と思い出を持っている事と思います。
 6月16日午後11時に羽田をノースウェスト機で飛び立ち,時差の関係で15日23時30分にアラスカのアンカレッジ空港に到着した。白夜で空は明るく(暗くなるのは1日に40分位)ホテルに泊まるが当時はヨーロッパに行く航空機は殆どアンカレッジで給油して北極海の上空を飛んで行って,殆ど宿泊する者が少なかった。夏のシーズンだけカナダやアメリカからトレーラーで牽引して来る簡易建物でベニヤ貼りになっていたが防寒の方は意外に良かった。夜中に着いたのでオーロラも見る事が出来た。
 空港に着く迄,白夜で明るいので窓より海面を見るとアラスカの島々が森林で覆われていたが伐期が過ぎているのか大分,立ち枯れで白くなっている立ち木が多いのに驚く。
 アンカレッジよりアラスカ州都ジュノー迄3時間20分,人口は当時2万人と聞いていたがキングサーモンの大きな処理場があり,近くのメンデルホール氷河を見に行く。目の前にそびえ立ち,崩れ落ちた氷を舐め,中の気泡から何千年も前の空気を吸って楽しんだが,24年後の平成4年に同じ所に行くと氷河の落下点は遥か彼方にあり,地球の温暖化の激しさに驚いた次第である。

 ジュノーからシトカとランゲルにそれぞれ泊まり,製材工場を見るが規模や製材能力に驚く。プリンスルパードでは三新の早川さんと平住の伊東さんの3人で戦争中,活躍していた海軍の水陸両用の旧式飛行機に乗り込み,奥地の山林を見る機会があったが機体が古く,飛び立つ時に足下に海水が浸み込んで来るのには驚かされ良い経験になった。
 流木が多いので着水する時もフロートを折ると沈むから細心の注意が必要と言われた。カナダに入って,バンクーバー市は江間忠木材の故江間泰一君が余生を送りたいと望んでいた程素晴らしい街で,フェリーでバンクーバー島に渡り,ナナイモ,ポートアルバニーの製材工場と森林公園も見学してバンクーバーに戻り宿泊する。
 バンクーバーよりバスで国境を越えて,アメリカ本土に入るが通関手続きは驚く程簡単でシャトルに泊まる。禁止されていたが夜ダウンタウンの店に,無修正のAdult onlyの本を買いに行き,柄が悪いのが沢山いて,その上,子供には売らないと断られ,がっかりした。
 シャトルでは日本向けのカスケードの良材が多く積み込まれているので,タコマ埠頭やマウントレニヤ山の中腹より出て来る伐採地迄見に行く。掲載している写真の様に相当の巨木もトレラーに積み込んで出材して来るのには日本の山の伐採を知る者には驚異であり,殆どが長さ12メーターで出してくる。私共で群馬県の奥地に橋の架け替えに長さ16メーターの米松丸太を6本欲しいとの事でトレーラー2台で運んだ事があったが日本では考えられない事である。
 ロングビューからポートランドと木材産地の工場や伐採現場や種々の所をバスで廻ったが流石に若い連中が多いので無理が効いたのではないか。
 ポートランドからは再び飛行機でサンフランシスコ,ロサンゼルス,ラスベガス,グランドキャニオンを見て,ロサンゼルスに戻りハワイのホノルルで休養を取って,16日間の旅行を終了したのである。同じ様な年代の人や世話人や添乗員を入れて24人が,一人の怪我や病人も出なかったのは幸いであった。
 材商や新東京の方々とはその後も組合の特売等でお目に掛かり,親しく思い出話が出来て本当に参加してよかったと思う次第である。
 先月号に墨田川駅より貨車のトキ(25トン)でラワン丸太を盛んに積み込み発送したと記述しましたがその頃の写真が出て来たので珍しいのでお披露目します。

GIANT FIR LOG. This 13,000 board feet specimen is typical of the giants still found in the virgin forests of Oregon and Washington. A lot of lumber in this one.
 
隅田川駅構内,貸車「トキ」25トン積み込み風



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