東京木材問屋協同組合


文苑 随想

時代を見つめて No.42


「UFJ&三菱東京」の統合

時見 青風



 平成16年7月14日の各紙に“UFJ,三菱東京と統合へ”等の一面トップの見出しで,大きく記載された。やっと各行とも不良債権処理も進み,一応安定したかに見えた矢先の出来事であった。
 各紙の情報によると,UFJと三菱東京は五月頃から交渉・話合が進んでおり14日の発表になったと言うのだ。
 見出しの文面を拾って見ると,
「UFJホールディングスは14日午前,臨時取締役会を開き,三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合に向けた交渉に入る方針を決めた,3期連続赤字のUFJは,不良債権削減や収益力強化・金融庁からの業務改善命令など経営立て直しへ多くの課題を抱えており,単独での生き残りは難しいと判断した。三菱東京も統合に応じる方針であり,週内にも,合意に達する見通しである。経営統合が実現すれば新銀行グループの総合資産は百八十八兆円に達し,みずほグループを大きく上回り,世界最大のメガバンクが誕生することになる。国内の大手行は3メガバンクに集約され,金融再生の最終段階に入った」と記された。

 ついでに,現在世界の銀行ランキングがどのような順位なのか調らべて見ると。

    (国 名) (総資産)
1位 みずほグループ 日  本 140兆円
2位 シティグループ 米  国 138兆円
3位 UBS スイス 122兆円
4位 クレデイ・アグリコル フランス 120兆円
5位 HSBC 英  国 113兆円
6位 ドイツ銀行 ドイツ 111兆円
7位 BNPパリバ フランス 108兆円
8位 三菱東京グループ 日  本 106兆円
9位 三井住友グループ 日  本 104兆円
10位 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド 英  国 88兆円
14位 UFJグループ 日  本 82兆円

 (三菱東京+UFJ=統合が実現すれば188兆円,勿論,みずほを大きくはなして世界第1位となる。)

 銀行業界再編の流れがどうなって来たのか正確に言える人は恐らくいないと思う程,再編の軌道はややこしい。そこでUFJグループの再編の流れを追って見た。

 平成11年10月  東海銀行,あさひ銀行が共同持ち株会社構想,
          (あさひ銀行は協和銀行・埼玉銀行の統合で生れた
           銀行である)
 平成12年3月  三和銀行が合流し,3行で13年4月に経営統合へ計画
     6月  あさひ銀行が3行統合からの離脱を決定
     7月  東洋信託が三和,東海の統合に合流
 平成13年4月  三和・東海・信託3行のUFJグループが発足
※平成14年1月  UFJ銀行スタート
     5月  UFJ・14年3月期決算が約1兆2000億円の最終赤字計上
 平成15年5月  15年3月期決算で約6000億円の最終赤字を計上
     8月  金融庁が収益未達で業務改善命令
 平成16年1月  15年秋の検査忌避疑惑が表面化
     4月  16年3月期決算の予想を780億円の黒字に下方修正したが
     5月  UFJ信託銀行の住友信託への売却を発表
     5月  16年3月期決算で約4000億円の最終赤字
         寺西頭取らグループ3首脳が引責辞任
     6月  金融庁が検査忌避など4件の業務改善命令を発動
   7月14日  三菱東京へ統合を申し入れ
   7月16日  2005年度上期中の経営統合に向け協議開始を正式発表

 平成16年7月13日の最終株価は

  三菱東京 9,590円+110円
  UFJ    4,720円+150円
  みずほ  4,630円+060円
  三井住友 7,140円+120円

 東京証券取引所によると,
 16年7月14日朝から,三菱東京フィナンシャル・グループ株とUFJホールディングス株の取引を一時停止したが,UFJが「経営統合の申し入れについて検討中」とのコメントを発表したことなどを受け,同日午前10時56分に取引を再開したと記されていた。

 そして,翌日の7月14日の最終株価は,

  三菱東京 10,300円+710円
  UFJ    5,220円+500円
  みずほ   4,600円−030円
  三井住友 7,240円+100円

 となり,翌々日統合協議正式発表の7月16日の最終株価は,

  三菱東京 10,500円
  UFJ    4,750円
  みずほ   4,450円
  三井住友 7,190円

 株の動きについて素人の私には判断のつけようもないが,発表前の13日から16日マデの動きを見ると赤字にあえぐUFJの株価はほとんど変わらず,受ける側の三菱東京は910円値上りで10%アップ,この株価を見ても三菱東京1人勝の気がする。
 UFJグループの主な大口融資先を拾って見ると,話題中の大規模再建中の企業が頭を並べている,だからこの結果になったのだとも言うことなのだろうか。

  (UFJによる
金融支援)
(再建に向けた動き)
1.ダイエー 2,600億円 福岡事業売却。
再建計画2年目の目標達成した
2.大京 3,924億円 不動産事業を分離しマンション事業に特化
3.藤和不動産 1,919億円 マンション事業に集中
4.ミサワホームホールディングス 1,700億円 大型分譲地開発事業縮小
5.双日ホールディングス 1,500億円 ニチメンと日商岩井が合併し「双日」に
6.トーメン 1,400億円 トヨタグループが株式35%を保有し傘下に
7.アプラス 1,300億円 カード,消費者金融事業に特化
1兆4,343億円  

  上記に記した大口の企業を合計しただけでも1兆4千億円にのぼる。そして,この他に2兆5千億の債権がある。
 この債権が今後の課題だが統合前にUFJグループが抱える大口融資先の処理を完了する方針を表明した。

 16年7月16日統合発表のポイント,来年度上期実現へ協議。

 1,2005年度上期中の経営統合を目指し協議を進める。七月末をメドに
   基本合意書を締結。
 1,三菱東京によるUFJへの資本支援に関する協議を進める。
 1,UFJの大口問題先の処理・再生は統合前に完了。
 1,三菱東京・UFJは統合後もニューヨーク証券取引所への上場維持。
 1,UFJの公的資金は早期返済を目指す。
 1,統合比率,統合の形態などは今後協議。


 この統合に一般的に評価すると紙面にも書かれているように,大企業向けに強みを持つ三菱東京と,個人や中小企業向け取引を得意とするUFJが互いの強みをフルに生かすことが出来れば,三メガバンクに再編される金融グループの中でも群を抜く高い競争力を持つことになるのではと言われている。
 旧三和時代から又旧東海銀行も個人や中小企業取引に軸足を置いてきたUFJの営業力は,財閥系として大企業に強いが,個人や中小企業向けが弱い三菱東京と理想的な補完関係にあることになる。
 三菱東京,UFJが統合したあかつきの合計貸出残高は新聞によると89兆円,預金残高は119兆円に上り,何れもみずほ,三井住友フィナンシャルグループを大きく上回ると言う。どでかい銀行の誕生となる訳だ。
 この統合が実現した後の総資産(前にも記したが)188.7兆円,従業員数40,709人になるが,かなりのリストラが必要になるだろう。そして店舗数,881店。これも間引はあると思われる。今後の成り行きに目がはなせない。なぜなら三和・東海・UFJ・東京銀行・三菱銀行・三菱東京共に全部の通帳を作って来た,得意先の一人としてである。そしていろいろかかわりの多かったこの銀行が1行となってしまうからだが,考えて見ると時代の余りにも激しい変化が身にしみる。
                        平成16年7月18日




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