東京木材問屋協同組合


文苑 随想

時代を見つめて No.58


「堀江貴文」被告の保釈について

時見 青風

 平成18年4月27日,証券取引法違反(偽計取引,風説の流布,有価証券報告書の虚偽記載)の罪に問われた「ホリエモン」こと堀江貴文が釈放された。1月23日の逮捕以来,94日ぶり約3ヶ月ぶりに釈放され,27日午後9時40分すぎに東京・小菅の東京拘置所を出た。頭髪が伸び,テレビを見るかぎり,かなり痩せた印象であった。報道によると,8キロ減ったとされる。又面会口の門前で「世間をお騒がせし,申し訳ございませんでした。ライブドアの株主の皆さま,従業員の皆さま,関係者の皆さま,ご心配をお掛けしました。また,大勢の方に励ましをいただき,ありがとうございました」と謝罪し,深々と頭を下げたのだが,どう解釈すればよいのか。
 又,報道によると,薄いブルーのトレーナーに黒いジーンズ姿,逮捕以来切っていない頭髪はかなり伸び,前に記したが体重が約8キロ減ったため,頬が幾分こけた様子である。まばゆいフラッシュの放列に目を細めながら,待ち構えた約600人の報道陣,近隣の住民達へ2度頭を下げたと言う。上記の謝罪と感謝の言葉を大声で,更に深くお辞儀をしてから出迎えたシルバーのワンボックスカーに乗り込んだようだ。又々報道によると,東京拘置所の敷地を出た後も,取り囲んだ報道陣に難度も頭を下げたとのこと。そして午後10時すぎに自宅のある六本木ヒルズに3ヶ月ぶりに帰宅したのである。
 「ホリエモン」の保釈を認める東京地裁の決定は26日に出され,保釈保証金3億円を納付したと言う。

 この保釈金について報道の資料からもう少し詳しく取り上げて見た。
 堀江被告の保釈金3億円は,証取法違反容疑で逮捕されたライブドアの元幹部4人の保釈金が1千万〜5千万円だったことを考えれば結構,高額だと思うのだが,別件で過去の最高額は下記のように詐欺罪などに問われた元ハンナン会長は20億円で,所得税法違反(脱税)の罪に問われた元地産会長と元末野興産社長の15億円が続いている。このように他の重大事件と比較すると,ホリエモンの3億円は高額とは言えないようである。
 保釈保証金の算定は,刑事訴訟法で規定され,犯罪の性質や情状,証拠の証明力,被告人の性格や資産等で決定されると記されている。これらの保証金は基本的には全額返還されるが,逃亡や証拠隠滅などの保釈条件に違反すれば没収されると言う。
 下記のように,ロッキード事件で逮捕された「田中角栄」元首相の保釈金は2億円であり,所得税法違反罪の「金丸信」元自民党副総裁は3億円で,証取法違反罪の「堤義明」元コクド会長は1億円だったと記されていた。

過去の高額保釈金 ※は故人
保釈金 名 前 肩 書 年月 罪 名 判 決
2億円 田中角栄※ 元首相 76. 8 外為法違反罪など 懲役4年,追徴金5億円
2億円 江副浩正 元リクルート会長 89. 6 贈賄罪 懲役3年,執行猶予5年
3億円 金丸 信※ 元自民党副総裁 93. 3 脱税 懲役2年4ヶ月,執行猶予4年,罰金7,000万円
6億円 許 永中 元会社役員 93.12 特別背任罪 懲役7年6ヵ月,罰金5億円
15億円 末野謙一 元末野興産社長 96. 9 強制執行妨害罪など 懲役4年,罰金3,500万円
5千万円 鈴木宗男 衆議議員 03. 8 あっせん収賄罪など 1審で懲役2年,控訴中
3億円 武井保雄 元武富士会長 04. 2 盗聴 懲役3年,執行猶予4年
20億円 浅田 満 元ハンナン会長 04.12 詐欺罪など 1審で懲役7年,控訴中
1億円 堤 義明 元コクド会長 05. 3 詐欺罪など 証券取引法違反罪 懲役2年6ヵ月,執行猶予4年,罰金500万円
3億円 堀江貴文 元ライブドア社長 06. 4 詐欺罪など 証券取引法違反罪 懲役2年6ヵ月,執行猶予4年,罰金500万円

堀江被告の保釈までの簡単な経過
平成8年(1996年)  
04月 堀江被告がライブドアの前身,オンザ・エッヂを設立
12年(2000年)  
04月 東京証券取引所マザーズ上場
16年(2004年)  
06月 プロ野球近鉄球団買収の意向示す
17年(2005年)  
02月 ニッポン放送株を大量取得
09月 衆院選広島6区で落選
12月 ライブドアが日本経団連入会
18年(2006年)  
01月16日 東京地検特捜部がライブドア本社など家宅捜索
01月18日 東証に株売買注文が殺到,全銘柄取引ストップ
01月23日 特捜部,堀江他3人を逮捕
01月24日 堀江被告社長辞任
02月22日 特捜部,堀江被告他4人を再逮捕
03月13日 東証,ライブドア株上場廃止決定
03月16日 ライブドアと有線放送のユーセン業務提携
04月14日 ライブドア株上場廃止
04月26日 保釈許可決定
04月27日 保釈
 結局,堀江被告は容疑否認のまま95日で保釈金3億円積んで保釈された訳だが,異例の短さだったようである。過去の例としては,「外務省のラスプーチン」と呼ばれた佐藤優・起訴休職外務事務官の勾留日数は512日と言う長期の現実もあるようである。
 報道によると「ホリエモン」は小説「白い巨塔」や中国の歴史書「史記」など約2百冊を差し入れられ読破する一方,韓国語の勉強も続けたと記されていたが,矢張り並の人間ではなかった事が良く分かる。
 堀江被告の今後どのような生活を送るのか,私がいちいち気にする事ではないのだが,矢張り気になる所でもある。そこを書かなければ,この文が終わりになるので,調べて見た。
 基本的には「住所」として,被告人ははっきりした住所を届ける事になっているので,今までの「六本木ヒルズ」の自宅を届け出たと言う。又宿泊をともなう旅行などは,裁判所の許可が必要である。裁判所の呼び出しには必ず出頭しなければならない。
 また,事件の関係者らと会ったり,電話,ファックス,メールなどで連絡を取ることは禁止されていると言う。一方,テレビ出演やインターネットのブログ,株の取引などは認められているらしい。
 未だにライブドアの株の17%超を握る筆頭株主と言うが,経営には復帰する可能性については,どの新聞を見ても,ないだろうと記されている。
 堀江被告もそれはないと言っているようだから,ないのだろうとも思う。
 堀江被告は,株のほかにまだ多額の個人資産があると言うし,彼の事だから,大きな事を今後もやる事だろう。又芸能界入りの声もささやかれているようである。
平成18.5.7記



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