東京木材問屋協同組合


文苑 随想


日本の文化 「日本刀」…Japanese Sword…

「♪一家に一本 日本刀 スカッーと爽やか日本刀♪」

其の70(金工・パートII)

愛三木材・名 倉 敬 世


 今回は刀や太刀の刀身を離れて,本来ワンセットである刀装具のご紹介を致しましょう。一振りの刀を仕上げるには七人の手を煩わせると申しますが,その七職とは何んだんべ〜?。
1. 大鍛冶 踏鞴師と云う,山野に砂鉄を探し錬鉄する製鉄業者。〜もののけ山の原住民。
2. 小鍛冶 刀鍛冶の別称。神が狐に化身して向槌を打つ,謡曲の三条小鍛冶宗近が始祖。
3. 砥 師 刀の「良し悪し」は砥師の腕による。各伝法(大和・山城・備前・相州・関)に精通。
4. 金 工(銀師) 鍔 小柄 笄 目釘 目貫 縁 縁頭 等には代々伝承の一門がご猿。
5. 鞘 師 武家太刀,天正拵,薩摩拵,肥後拵,幕末拵,時代により様々な形式がある。
6. 塗 師 一本の刀には,登城・遊興・日常,と三通の鞘が必要,為に色〃な鞘がご猿。
7. 組紐師 下緒 柄巻 袋物 箱物 等,献上品や贈呈品としての用途はかなり多い。

 以上が刀職での七職の本体ですが,他に折紙を発行する鑑定家や書家も同根にて候。


 セブン(7)に拘ると同じ金工の作品だけで揃える,二所から七所物と云うセットもある,世の東西を問わず,ナナ(7)は日本も西洋もラッキーナンバーで縁起の良い数字なのでご猿。本来は,1縁金 2縁頭 3目貫 4折金 5栗形 6笄 7裏瓦。これが正式だが,後には鍔や小柄が入り選択肢が増えている。これ等は使用も出来るが立派な美術工芸品で,主に「お使い物」即ち贈答品→賂での用途がメインとなっているのでご猿。


 当時(元禄〜享保・1700前後)は侍の世界も世代交代の時代であるが,倅は何んもせずとも,先祖の武勲で家禄が決まっているので毎日がサンデ〜で閑でしょうがない,元気な旗本は水野十郎左衛門の「白柄組」(柄糸を白に揃えた)の如く,白昼堂々と徒党を組み江戸市中を闊歩し,大岡越前守忠相が創設した「町・火消し」の幡隨院長兵衛,加賀の前田藩が始祖の「大名・火消し」の加賀鳶+抱えの相撲取りと,三者入り乱れて大喧嘩を繰り広げていたが,その他の侍にも洒落者や伊達者が多く,このため,近世日本に於いてはこの時代が,一番,工芸や文芸が勃興した時期だと云われている。…深川もこの当時がバブルの絶頂期だわ…。

 「笄」とは何ぞや?。

 笄とは刀の鞘の差し表に鯉口から栗形の下を通して差す物。髪掻きが訛ったものと言う。古くは頸刷・擽髪刷・掻頭尖・等の字を宛てた。…読み方は不明だが全て宛字だと思うよ。
 本義は簪で,これには2種類あり,共に発祥は中国宮廷で殷虚(BC1300)よりも出土。
1.男も女も使い,髪が崩れない様に捺す物。2.男子が冠の落ちない様に捺す物。
 中国では,簪導と言い,天子は玉,諸侯は象牙,士は骨を用いた。我国では刀に差す笄も,初めは後者の用法だった。藤原行成が守り刀から笄を抜き取り鬢の解を直したとあるは其れである。また髪掻きと云う語源どおり,烏帽子や兜を被っていて頭が痒くなった時に,下から差し込んで掻いた。竹や赤銅で作ってあるのは,曲げて差し込めるからだと云う。

 笄を刀の鞘につける風習は,「源氏物語」「今昔物語」にも出て来るから,平安時代から一般的になって来たと思われる。最初は公家が木や竹で作り漆で草花などを描いたという。次に南面・北面の警護の武人達が赤銅を用いたと云われる。古い形式の物は耳掻きが長く実際に耳掃除が出来る。足利義政所持の竹の笄は三本に分かれており,耳掻きが特に長い。


 鎌倉期になると宮中も滝口や諸家の青侍も,鎌倉風の笄を鞘巻きに付けていた。それを「鎌倉笄」と云い,後の「割り笄」と同じと言われている。用途は笄と箸の両用でござる。
 笄は普通,刀の差し表に差し,小柄は裏に差す。併し笄だけの場合は逆に差し裏に差す。これを「裏差し」という。
 [目 貫]とは何ぞや?。〜田貫〜狸ではござんせん,「目貫通り」の目貫であります。刀の柄のド真中に刀が抜けぬ様に固定している,装飾された金具。目とは孔のことで,それを貫いているので目貫と言う。目釘の脱落防止と装飾のために頭金を取り付けた物。

小柄の名称
 「縁・縁頭」これはエンでは無くフチと読みます,縁は鍔に接する方の金具で縁頭は柄の頭の金物。縁頭に接する方を腰,鍔に接する方を天井と云う。縁の型は非常に多様。


 これ等を組み合わせて,前図の如く最大で七所までセット致しますが,鍔の入れ方で,価格が大きく変りますので,今は鍔は鍔で一人歩きをしております。因に鍔や小道具の上手の物は下手な迷刀よりチト高価でありますが,日本の工芸品はアラウンザ・ワールドで世界的にもピカイチでおます。現品が小さい為に戦乱等での消耗も少く保存も簡単な為,比較的多く残っておりますので,これからコレクトする方には最適ではないですかぃな〜。

〜さて,来月は年末でござんすので最後の大物である,鍔の出番かと思っておりやすが〜。


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