東京木材問屋協同組合


文苑 随想

超巨大地震に迫る
─日本列島で何が起きているのか─

榎戸 勇


 表題の本がNHK出版から6月に出版された。私は早速購入したが、何かと取り紛れて机の上に置いたままにしていたが、やっと10月になって読み終えた。年と共に本を読むのが面倒臭くなっているようだ。

 この本は新書版で僅か205頁、若い人なら一週間で読めると思うので、是非読んで頂きたい。

 著者は第四章を除き全て東大地震研究所の准教授(助教授)大木聖子(理学博士)で、第四章(115頁〜142頁)だけ同研究所教授の纐纈一起(理学博士)である。
 大木准教授の文章は私達にもよく分かるやさしい文章で、流石女性だと思った。
 私がこの本で初めて知ったことを以下述べる。

(1)日本海溝という最も深い所は8412mもある大きな溝が我が国の東方150km位の太平洋の底に有ることは皆様ご存知のことと思う。太平洋を東から西へ向って動いてくる太平洋プレートはこの溝へ吸いこまれ、それからは年2乃至3cmの速さで日本列島を東から西へ押している。ところが陸地から15乃至20 kmの処で列島を乗せている北米プレートにぶつかる。北米プレートは非常に厚い(厚さ50乃至60km)ので太平洋プレートはその下へ潜らざるを得ない。
 太平洋プレートが潜り込もうとすると、陸のプレートには強く押さえる処と、比較的緩い処がある。緩い処は太平洋プレートが静かに少しずつ潜り込んでいく。しかし強く押さえられている処は潜り込むことができず、そこで止まってしまう。止まっても後から次々と太平洋プレートが来るので、ある限界に達すると耐えられなくなってくる。その時、溜っていた太平洋プレートがどっと勢いよく陸地のプレートの下へ潜りこむ。地震の発生である。
 三陸沖は概ね30乃至40年毎、この地震が起きる。M8.0位の地震である。地震の多発地域なので津波対策が最も進んでいる処である。この地震は近いうちに発生すると考えられていた。つまり想定されていた地震で、この程度の地震には十分備えていた。ところが今回茨城県沖迄南北480kmもの大地震が発生するとは全く考えられていなかった。これが想定外という発表になったのである。M9がM8の約32倍の地震であることは、随想に書いたことがある。津波対策を越えた大地震で大被害になったのである。

(2)津波の発生
 強くへばりついていた部分に溜っていた太平洋プレートが一斉に北米プレートの下へ潜り込むので、厚さ50kmもある北米プレートも堪えきれずに、その部分が持ち上がる。海底が持ち上がるので海水は四方に勢いよく押し寄せる。これが津波である。津波の速度は時速50km乃至60kmとのことで、北海道の広野など広い直線道路を車で走る速さに近い。
 地震の揺れはほぼ即時に伝わるので、震源から10km離れている処は約10分後、15km離れていれば15分後程で津波が来ることになる。この10分、15分が大切である。その時間内に安全な処へ避難できるか否かで生死が分かれることになる。都会では耐震対策が十分できているビルへ避難しよう。江東区の小学校中学校は大丈夫の筈である。
 尚、津波は時速50kmの場合高さ30cmの津波でも普通の人は立っていられないという。大雨で増水し流れが非常に速い多摩川上流に膝までつかったらとても立っていられまい。足をすくわれて流されたら、まずお陀仏だろう。低い津波でも馬鹿にせず、安全な場所へ移らなければなるまい。東京湾岸の東京23区の海沿いは津波が来ても低い津波なので安心だとは言えないのである。地震、そして津波対策は全て安全第一で臨まねばなるまい。

平成23年11月7日 記
 

前のページに戻る

Copyright (C) Tokyo Mokuzai Tonya Kyoudou Kumiai 2011