東京木材問屋協同組合


文苑 随想

見たり,聞いたり,探ったり No.136

東日本大震災、お見舞申し上げますと共に一日も早い復旧復興をお祈り致します。

東大寺二月堂のお水取り、修二会(しゅにえ)
青木行雄

 奈良「東大寺二月堂のお水取り、修二会」は御存知だろうか。最近、奈良観光ガイドブックには必ず紹介されており、お松明の燃える写真が掲載されている。知ってはいるがまだ現地で見たことはないと言う人も多いと思う。なかなかの迫力であるが、奈良ではまだまだ寒い3月の上旬である。見に行きたくても寒いので足が遠のく人も多い。また大阪・京都等近い人達は夕方に来ても日帰り出来るが、東京等遠方からの場合、泊り掛けになる。
※高台にある二月堂ではお松明の見える外廊下が見える。参道から写す。

 では知らない人のために記して見ると「お水取り」とは何か。静と動、水と火のダイナミックな祭典と言うのが正しいのかも知れない。普通の日本仏教の業には見られない大胆な行事である。この行事は、正式には「修二会(しゅにえ)」といい、大きな松明を使うところから「おたいまつ」と呼んだり、13日早朝に本尊に捧げる1年間の香水を若狭井という井戸から汲み上げるところから「お水取り」と呼んでいるようだ。関西の人達には春を告げる行事として有名らしい。お水取りが過ぎないと本当の春は来ないと信じている人が多いと言われている。それだけ関西の人達にはなじみが深く待ち遠しい行事と言える。行事は2月20日から月末までの「前行」と、3月1日から14日までの「本行」からなる。
 「修二会」とは、一口で言うと、寺と僧、そして社会の1年の準備で、水の外に南天や椿の造花約400個など必要物品を作ったり声明の練習をしたり、そして精神的なものと両方やるということ。「前行」では本行のための準備をし、「本行」では、1日に6回の行(「六時の行法」という)を行う。この六時とは、「日中(にっちゅう)、日没(にちもつ)、初夜(しょや)、半夜(はんや)、後夜(ごや)、晨朝(じんぢょう)」である。「前行」は「別火坊」で行う。

※12日に行われる「篭松明」孟宗竹の長さ8m、篭の大きさ80cm、重さ80s、これに火をつけ、振り廻すから本人は重労働である。
※上が二月堂の外廊下、下が「囲い」の中に集まった人達。ここは招待者の席で火の粉が降りかかる。
※ぎっしりと集まった人達、柵から手前が招待者。後ろ側が一般者で、一般者は動きながら、お松明を見る。この日は4万人の入場者だったと言う。
※お松明の始まる直前、全部明かりが消えて始まるが、歓声がすごかった。遠くに奈良の町の明かりが見える。

 「修二会」の意味は、十一面神咒心経に基づくものでその本尊である十一面観音の前で全ての罪や過ちを「懺悔」することにあると言われている。これは11人の練行衆(参篭、おこもりする修行僧)が人々に代わり本尊に個人だけでなく国家や社会が犯した全ての罪や汚れを払うと同時に、それらの人々の除病延命を祈るための行いと言われている。その中で僧と寺と仏教と国民と国家がつながり、それぞれの反省とリフレッシュがされ繁栄を祈る。これが「修二会」の核心部分であるらしい。お松明はその一部と言う、そして「本行」は「二月堂」の中で行われる。
  お松明は各日のクライマックスとなる初夜の行へ二月堂に上がるための灯りにすぎないと言われている。二月堂の周囲の舞台では炎の華やかな演出が行われる。火の粉を浴びると1年間の幸と健康を得られると言うことらしい。火の粉を浴びながら、舞台の下に居たが、確かに御利益がありそうな気がした。
 お松明は、3月1日から14日まで毎日、初夜の行法(大体19時〜20時)に練行衆が堂に上がる時の案内に使われる。毎日10本上がり、全長約6m、重さ約40kgもあると言うが、12日だけは、通常より大きな、全長約8m、周囲約30cm、重さ約80kgもあるものを11本も上げる。この松明は、通常より大きいために、竹で編んだ篭を松明に被せたので、篭松明と呼ばれる。篭の直径は約80cmもある。
 11本が別々に別れるので、時間がかかる。1本が終わってから、別のお松明が上がって来る。だから舞台では1本しか見られないが、14日は10本が続いて上がるので一堂に何本か続いて見られ、またすごい景観のようだ。この連続お松明はまだ見ていないので、又の機会に行きたいと思っている。

 3月の本行スケジュール
 東大寺での一年間の行事はいろいろとあるがこの二月堂の本行がメインの行事と言われるようで、3月1日から14日まで行われる。14日間毎日少々行事は違うのだが一般の人には毎日行われる「お松明」が一番の見物といえる。
 初日の1日は、5回行われるうち14時15分から行われる「一徳火」の行事では、二月堂内外の灯が全て消され扉が閉ざされる。堂童子が練行衆の前に出て「火打ち石」で浄化を切り出し、本尊の常燈に点火する。堂司はその常燈を持って内陣に入り、須弥壇の正面中央に据える。これからの一年間不滅の燈として守られると言う。

 二月堂までの交通
 近鉄奈良駅から徒歩40分位かかる。
 駅前からバスに乗れば約10分で「大仏前」バス停下車。そこから歩いて約15分位かかる。人がぞろぞろと歩いているからついて行くとよい。3月はまだ奈良は大変寒いので気をつけること。懐中電灯、東大寺内の地図はあった方が良い。又、山道なので履物と雨の日もあるから雨具等もいる。
  お松明の時間帯
  1日〜11日、13日  19:00  松明  10本 約20分
  12日        19:30  篭松明 11本 約45分
  14日        18:30  松明  10本 約10分

※これが「お松明」の真っ赤に燃える火の玉である。暗闇の中にパチパチと燃えて火の粉が降り注ぐ様は、表現の仕様がないほど大感動であった。カラーでないのが残念である。

 特に12日は人が多いので早めに行くと良い。他の日は比較的空いているらしい。

 東大寺の本堂は聖武天皇により天平年間(729〜749年)に創建されて以来、焼亡と再建の歴史が続き、金堂(大仏殿)は2回、治承の兵火(1180年)と永禄の兵火(1567年)で焼失、現在の金堂は江戸時代中期の元禄から宝永に再建された大仏殿である。
 しかし、この二月堂は、治承・永禄の兵火でも焼失をまぬかれているが、寛文7年(1667年)の「修二会」中に火災で一度全焼した。そして当時の将軍・徳川家綱の寄進により寛文9年(1669年)に再建している。明暦3年(1657年)二月堂焼失の10年前に江戸城明暦の大火があった。現在の二月堂はこの時の江戸時代寛文9年の建物で木造の建築物である。将軍の寄進で再興されただけに入念な施工で、江戸時代前期の建築のなかでも高く評価されていると言う。本当に素晴らしい木造建築である。
 建物も、お水取りも素晴らしい。私のおすすめしたい場所の一つである。

平成23年4月29日 記


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