東京木材問屋協同組合


文苑 随想

材木屋とエコ 環境 省エネ(第3回)

東日本大震災 日本人の心を一つに
自信と勇気を奮い起こして 希望と大復興へ !!

(株)コバリン 奥澤 康文


 今の日本は、不安、恐怖、絶望の渦中にあり、夢や希望は語りづらい。ある意味で、その通りだと思う。だが、この殺伐とした時期にこそ歩みを休めて、「忙中閑有り、苦中楽有り」を語る戯れも必要ではないかと思う。自画自賛とのお叱りを覚悟の上で、自信を喪失した日本を取り戻すために、敢えて、自ら慰め・勇気づける事も大切ではと思っている。

【遅い春の訪れ】 4月10日(日)、大震災から丁度1ヶ月。久しぶりに大宮公園を散策した。寒さで開花の遅れた桜が、見事に満開であった。桜の高潔な微笑みと時折舞い散る花びら、そして、欅の元気印の新緑の息吹で、地震で疲れた皆の気持ちがその日は癒されたように感じた。自然を愛(め)でることは、日本人の伝統的な特性だ。大宮氷川神社も、よく見れば、大地震での亀裂が散見された。また、揺れで倒れたであろう石塔が撤去された跡もあった。風もなく、気温も心地よい花曇りの午後であった。こんな天変地異があっても自然は強い。四季を決して忘れることなく、春が巡ってきた。諸行無常を感じながらも万物は流転している。樹木や生物の中には、再生・活力のDNAが含まれている。

【大地震による主な文化財の被害】文化庁調べ:『朝日新聞』(4月10日)
宮城県 瑞巌寺(松島町) 国宝 壁の一部崩落・亀裂
宮城県 大崎八幡宮(仙台市) 国宝 板壁、漆塗装、彫刻が破損
宮城県 東照宮(仙台市) 重文 石灯籠の8割が倒壊
宮城県 松島(松島町など) 特別名勝 岩崩壊など
岩手県 高田松原(陸前高田市) 名勝 7万本の松が1本に
茨城県 旧弘道館(水戸市) 特別史跡・重文 「学生警鐘」全壊など
茨城県 茨城大学五浦美術文化
研究所六角堂(北茨城市)
登録有形文化財 津波で流出
茨城県 桜川市真壁伝統的建造物
群保存地区(桜川市)
重要伝統的建造物群
保存地区
石蔵など倒壊
東京都 小石川後楽園(文京区) 特別名勝・特別史跡 石橋が崩落

【余震がつづく】 3月11日の大震災(M9.0)(=阪神・淡路大震災の約1,000倍のエネルギーという)後、毎日のように余震があり、その恐怖が冷めやらぬ、4月7日 深夜、宮城県沖で、M7.1の地震が起きた。直後、約400万世帯が停電した。余震とは言え、規模的には、阪神・淡路大震災(M7.3)と同クラスであり、重なる痛手だ。気の毒すぎて、掛ける言葉がない。場所によっては、3月11日の地震より被害が大きいところもある。

 そして、4月11〜12日にも大きな余震が数回あった。このまま、当分は続きそうであり、不気味な不安は相変わらずである。今回の大地震の解析が進んでいるが、専門家チームの見解では、地震前に比べ、宮城県沖の海底が南東へ約55m動き、海底が約5m隆起したという。記録のないスケールだ。4月24日 現在、M5以上の余震は、500回以上発生している。

【原発事故のその後】 チェルノブイリ原発事故(1986)当時も、世界中がパニックになった。今回の事故が、極めて重大・深刻であるとして、事故レベル7となり、チェルノブイリと同等になった。放射能汚染水を海へ流したことが国内外から非難の嵐が巻き起こっている。見えないものだけに、恐怖の連鎖が国際的に波紋を呼んでいる。依然として、最悪の事態と不安を抱えながら、近隣一帯が不毛の地になりそうだとの報道もあり、一進一退の予断を許さない状態だ。日本人全員が注視している。本当に辛く、残念でならない。

【節電25%の波紋】 政府が、今夏の電力需要のピーク時に、停電を回避する為に方針を打ち出した。大企業のみならず、中小企業でも死活問題だ。大も小も、知恵と工夫の見せ所だ。3月の計画停電の影響で、駅でも蛍光灯をはずして節電に協力し始めている。家庭や職場でも同様だ。4〜6月は、エアコンが使用されない為、何とかなるだろう。問題は、7〜9月をどう乗り切るかだ。その先の、長い冬も控えている。後日、15%への下方修正案も出たが、15%を達成するには、25%位の高い目標は必要と思われる。

【わたしの節電・省エネ計画】
1) 早寝早起き 5時起床、7時から仕事。
2) エレベーター 極力使用しない。(自宅マンション、会社)
3) 電源類をまめに消す 照明、パソコン、テレビ、その他電化製品類
4) 冷蔵庫・エアコン 10年以上で古い為、省エネ品への買い替え(予定)
5) 食事 腹八分目。食べ過ぎや食べ残しはしない。
6) 仕事 事務生産性の向上を企画、実現する。

 節約しすぎても、却って経済が萎縮してしまうだろうが、昭和30年代位の節約意識は必要だと思う。そうすれば、見えなかったものが見えてくるだろう。また、インターネットで、現在の東京電力の使用状況が検索できる。例、4月14日(木)午前6時代で67.1%(=2,685/4,000万kw)。100%を超えれば大停電となる。日常生活も脆弱さの上にある。

【さて、省力化事例で自信を深める】 誰でも普通にやっていることだが、私の事例を紹介します。事務生産性の向上には何をすべきか? 現在では、パソコンなしでの日常業務は考えられない。弊社では、業務内容によるが、事務生産性を20〜70%削減・向上を実現してきた。例えば、資金繰り管理でも大幅な工数削減を達成した。

 従来使用した管理表の数を減らし、作表時間を節減できる方法へ転換した。管理表の精度を従来より大幅に向上させた。一例では、毎日、1時間 ⇒ 5分とした。この省力化は、過去の改善企画の中で、私の自負できる最高の事例だった。やはり、追い込まれた末の、いわば、火事場の馬鹿力の部類であった。自分自身の企画力との戦いの末に誕生した。

【パソコンアレルギー】 学生時代、理数系は比較的好きであったが、機械物は苦手意識が強かった。40歳代の前半までは、大のコンピュータ嫌いで、見るのも、近づくのも嫌だった。当時は、止むを得ずオフコンへの入力をしていたが、おっかなびっくりで、操作ミスの連続だった。日常的な部分は、若い人に事務処理は任せていたが、時代の流れで、徐々にその手が通用しなくなった。若い人に比べて、覚えが悪い反面、忘れるのは早かった。悪戦苦闘の末、ワードとエクセルの最低限の操作ができるようになった。

【パソコンの活用法】

【エクセル + 図解化 ⇒ 企画書に生命を注入する】 上級の機能も勉強したが、難易度の割に使用頻度が少ない為、必要時はSE(専門家)に一任した。日常的には、ワードとエクセルで十分とわかり、脇道に反れることは止めて、エクセル一本でやってきた。しかし、PCはあくまで手段であり、肝心なのは使い方や中身であることを痛感した。

 過去の燻ぶっていた生産管理・品質管理の経験に火が付き、浮かんだ構想を次々に漫画的に描いて、徐々に、分析・企画等ができるようになった。日頃のアイディアは、都度、手書きでまとめる。小中学校時代に、図工が一番好きだったことが幸いした。また、高校時代の物理部で、天気図をフリーハンドで書くのは、先輩や顧問の先生より得意だった。昔から、「芸は身を助く」と言ったが、思わぬ所で、身をもって実感した。

【問題・課題を俯瞰(ふかん)し、図解化する】 今注目を集めている、管理手法である「見える化」と「図解化」とを両輪として色々な企画書を作成してきた。PCに落とすのは、ごく一部で、大部分は落書きに終わる。思いつけば、駅のホームでも雑記帳にメモする。この手法を自分なりに学んで、内容をできるだけ見易く、簡単にすることを心がけてきた。別に、PCを使用せずに、普段の創意工夫を継続することで、簡単に省力化をできることは多々ある。勿論、どこの職場にも慣習があり、チームワークだから、自分では、かなり合理的と思える案でも、容易には受け入れられないこともある。

【図解で問題がわかりやすくなる】

【千葉社長との出逢い】 私は(株)コバリンに中途入社した。しかし、驚いたことに、会社の千葉社長(現4代目)が、過去にこだわらない果敢な経営改善をやっていた事に、大きく共鳴し、サラリーマン人生の終盤をかけた。当時の弊社は、既存のシステムが老朽化し転換の時期に来ていた。簡略化したシステムが求められ、失敗は許されない状況だった。

【販売管理と弥生会計】 既に、巷での「弥生会計」の評判を聞いていた私は、週末、自分でPC会計学校へ行った。一元化したシステムに比較すると、チャチであることは仕方がないが、非常に安価だった。こうした安価なパッケージのシステムを組み合わせて、効率的に活用することが発端となり、弊社の方向性を決定づけた。長い挑戦の開始だった。

 そこで、事前のケース・スタディーに成功した私は、市販の「販売管理システム」と「弥生会計」とをマッチングする事で、相当な事務の合理化の可能性があることを社長へ提案した。弥生でも工夫と活用次第で、中小企業では、十分な財務会計システムとして通用する。「法人税の達人」を連動させれば、確定申告書や別表明細書まで作成できる優れものだ。
 
【驚きの結果】 PCを導入しただけでは、合理化はできない。使いこなすのは人間だ。肝心な部分は、普段、無意識に手作業でやっている無数のデータ作成や帳票類、二重処理やムリ・ムダ等を削り取ることが遥かに重要だ。数年に及ぶ紆余曲折の末、長年待ちわびた省力化が実現された。目標は大きい方が実現するといわれるが、進捗中は、気持ち的には薄氷を踏む思いの日々であった。どこの会社でも、システムの再構築はリスクを伴う。

 まだ、完全とは言い難いが、費用対効果を勘案すれば、成功の部類だった。月次の試算表や経営分析書がスピードアップした。事務の生産性向上や工数削減は、業務内容によるが、約20〜70%は省力化された。現状のぬるま湯に長く浸かっていると、何事にも鈍感になってくる。空気や水としか感じないものでも、改めて見直せば、問題の山だ。その山を宝の山にできるかどうかは、我々自身の努力と創意工夫による。喜ぶのも束の間、霧が晴れてみると、新たな課題が見えてくる。人生も仕事も転機の連続だ。楽しい転機があれば、悲しい転機もある。しかし、その難局を何とかして乗り越えなければならない。

【児玉先生との出逢い】 色々な実務書やSE・会計士等との出逢いもあった。私は、経営の手引書として、『経理の合理化』(日本能率協会)の本にヒントを得てまい進してきた。昨秋、完了した暁に、著者である高名な、児玉税理士に感謝の手紙を書いた。その直後、児玉先生が、わざわざ、弊社を訪問してくれた。千葉社長共々私も同席し、先生から身に余る光栄な言葉と新たな著書を頂いたのを記憶している。過去にメスを入れることは、誰しも辛いことだが、結果として、社長の英断であった。社内に、レアメタル(宝の山)が、まだ、まだ、眠っているので安閑とはしていられない。

【ちりも積もれば山となる】 上記は、一例にすぎないが、勿論、成功の裏には、失敗や試行錯誤も多々あった。ただ、小さな力でも、大勢の人に理解され、協力を得ることで、当初は困難と思える問題でも解決することができることを学んだ。だから、今回の大震災でも小さな力が結集されてゆけば、大きな波となり、日本復興の一助になると思います。

【東日本復興のグランドデザイン】 マスコミでは、連日話題になっている。後藤新平のような偉大な人が出てほしい。我々、一般の小市民には無関係な話かもしれないが、自分で、密かに夢や希望を抱くことは良いことだと思います。また、その情熱は、会社の事業計画書等の立案に共通する部分が多いようにも感じます。日本全体が元気になってもらいたい。失ったものを取り戻し、更には、復興後の姿を世界の人に見てもらいたい。遠大な願望だが、そう考えています。(← 現在の日本人の庶民の気持ちを代弁しました。)

 
安全
環境
医療
省エネ
農業
林業
酪農
漁業
岩手
               
宮城
               
福島
               
茨城
               
東京
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合計
               

◆ 平成23年4月のあとがき ◆ 大震災後、先行き不安が蔓延し、世の中が何となく暗く、殺伐としている。原発事故の行方を世界中が注目している。日本の製品が忌避され、企業の海外への移転は加速されるだろう。日本の危機を好機と狙う企業・国も多々ある。

 日本が長年かけて積み上げてきた多くの信用・実績が、この大震災を機に失われた。戦後の奇跡の復興から経済大国へ押し上げたのは、我々の両親や祖父母の世代の功績だ。だから、我々にもできないことはない。凛とした、新たなる創造的な復興ができるはずだ。

 昨日までの他人同士が、今日の友となる連帯や絆が各地で生まれていることは、心温まる頼もしいことだ。政治のみならず、企業の同業種、異業種等での呉越同舟の機運が隆盛となり、協力や連帯が生まれれば、道は必ず開けて行く。日々の平穏と安泰を願いつつ。
 

平成23年4月24日(日) 記

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