東京木材問屋協同組合


文苑 随想

ユーロはどうなるのであろうか
─難しい舵取りである─

榎戸 勇


 最後まで渋っていたドイツだが、やっと議会の承認を得てギリシャへの支援が決まり、3月20日のギリシャ国債は、何とか全面債務不履行にはならないで済んだことはご承知のとおりである。

 しかしギリシャへの援助金には難しい条件がついており、ギリシャ国民が素直に厳しい質素な生活を納得するのか否かは、これからの展開を見なければわからないと思う。

 ギリシャ国債は欧州の諸国がその大部分を持っているとのことなので、償還される国債の資金はギリシャには殆ど残らず、ギリシャは国債という負債が減ったとしても、代って援助金という負債が増えたことになるだけである。英国はユーロには参加していないが、ロンドンはニューヨークと並んで国際金融の中心である。(東南アジア諸国の成長に伴いシンガポールも第3の中心地になっている。)残念ながら東京はローカルの市場になってしまったようだ。

 ロンドンにはオイルマネーや中国等の余剰資金が集まり、専門のディーラーが右へ左へと運用しており、国際金融の大きな柱である。

 以下は前月号に引き続き私の独断による意見なので、眉にツバをつけて読んで欲しい。

 私は、ユーロという制度は完全に失敗だったと考えている。否、私だけではない、当事者のドイツもフランスも内心では失敗だったと思っているに違いない。しかし今更抜け出すことができないのである。麻薬の組織に入っているのと同じで抜けるわけにいかないのである。

 もしユーロが導入されていなければ、ドイツのマルク、そしてフランスのフランも高く、経済力の弱い南欧諸国の通貨は安かった筈である。従ってギリシャをはじめ南欧諸国にとってドイツやフランスのハイテク品は高価であり、自国の体力に合った量しか輸入できなかった筈である。しかし、単一通貨ユーロになって先進国の商品が安く買えるようになった。ギリシャを例にとると、政府はユーロ建ての国債を次々と大量に発行し、その国債を売ることによって得たユーロで沢山の高価な商品を輸入したので、国民は様変わりの豊かな生活をエンジョイした。しかし所詮は国債という借金による豊かさである。いずれ借金は返さなければならない。今年3月20日に国債償還の期日がくる。新しい国債を発行して資金を作ろうとしても、今度はその国債を引受ける国が無い。行き詰まってしまったのである。しかし、その国債が債務不履行になれば、波紋は欧州全部に広がり、更に世界全てに波及して世界大不況になってしまう。ドイツは今回のギリシャ追加支援に当初は消極的だった。ドイツ国民は自分達は堅実な生活をしているのに、浮かれて贅沢をしてきた国を助ける必要が有るのかと言っていた。しかし最終的に国民を説得し、議会の承認を得てギリシャ支援を承認したが、ギリシャに超窮乏生活を義務づける条件を付したのである。ドイツとしては、ドイツがギリシャ支援を断わったため世界大不況が起こると、その責を負わねばならないので、やむを得なかったのである。

 とにかく、ユーロは失敗だ。どのように収めるのか、ユーロの将来から目を離せないのである。困った制度である。

 話は変わるが、今年は年初から我国の、そして米国の株価が値上がりした。最近は利益確定の売りも多くなり、調整相場の様である。また機械受注もやや改善されたと新聞に載っていた。この動きを見て景気は回復に向っていると見てよいのであろうか。
 現在の株価は日米共にゼロ金利、金融機関もファンドマネーも投資する先がない。個人もゼロ金利では預金の利息は雀の涙、行き場が無いので株式に向っている面があるのではなかろうか。現在の株価をどう判断するかは難しいが、株を買っているのは投資ではなく投機筋が多いように思うので気をつけてやる必要があると思う。現在の我国の(そして米国の)景気は政策に支えられている面が多いと考える。本当の自力による回復ではない面が多い。最近の株式や投資信託は投資ではなく投機資金の流入、流出で動いているように思う。専門のディーラーは交替で24時間世界の株式市場の動きを見て、よし、今日は上がるぞと見れば買い、下がるぞと見れば売りに回る。インターネットで即時にできるのである。彼等は明日上がるのか下がるのかだけで判断して動いているようだ。一年後、二年後を予想して投資をしているのはごく一部の機関投資筋だけだと思う。
 我々素人は投機の渦に巻き込まれると思わぬ怪我をする。投機はしないでじっくり日本の、そして世界の経済、社会を見なければいけないと思う。
 どうも、老人の独断になってしまったがお許しを頂きたい。

以上
平成24年3月9日 記
 

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