東京木材問屋協同組合


文苑 随想

見たり,聞いたり,探ったり No.157

〜歴史探訪 一人旅〜
豪華客船「ぱしふぃっくびいなす号」で行く
…横浜港から太平洋を通り神戸港、瀬戸内海を通り、博多港へ…

青木行雄

 

※「ぱしふぃっくびいなす号」2万6千トン
 全長183.4m 巾25m最スピード21.6ノット
※横浜港、停泊中の「ぱしふぃっくびいなす号」
 かなり大きく見える。
※ホールにて船長以下上層部の人員紹介と船内の説明があった。乗務員200人以上。
※乗船すぐに避難訓練、浮装備を着て訓示を受ける乗客。
※横浜港を出て横浜ベイブリッジをくぐる。
※神戸港桟橋、神戸港中突堤旅客ターミナル
 すぐ右に見えるのが神戸ポートタワー
※神戸を出港して1時間。明石海峡大橋。
※関門海峡大橋、この下を「ぱしふぃっくびいなす号」で通過した。平成24年6月4日に陸上から撮影した。
※昭和天皇も2回宿泊され、「帝の間」まである「春帆楼」名付は初代伊藤博文総理大臣と言う。平成24年6月4日探訪した時の写真。
※船上より、関門海峡から「春帆楼」を望む、深夜の1時頃、ぼんやりと見えた。感動した。しばらく甲板に立っていた。
※メインダイニングルームレストランでの晩餐会会場風景。
※船内のシアターの風景、いろいろ放映していたが、何本か見た。けっこう見る人が多かった。
 

 目が覚めて天井を見るとかすかに揺れている。かすかにエンジンの音が聞こえた。一瞬ここは何故かと思った。すぐに記憶が甦る。今何時頃か、今何故を行航中なのか、窓から外を見た。かなり遠くに陸地が見える。
 南紀潮岬の南、何拾キロかを航行中。気分は上々であった。

 近年はクルーズ経験者も多く、常連の方もいると聞くが、時間に余裕があって、金もかかるので、なかなか長時間のクルーズは難しい。

 船のクルーズにもいろいろな客船があって、いろいろな種類があるようだが、この横浜の波止場に停泊する客船は、洋上の楽園と言われる豪華客船が大変多いようである。平成24年10月で横浜に寄港する客船の中で大きいのでは7万5千トンもある「コスタ・ビクトリア」で長さが252mもある巨大なビルを横にしたような船であった。

 この客船に比べればこの「びいなす号」ははるかに小さな客船だが、2万6千トンの「ぱしふぃっくびいなす号」の体験を記してみたい。
 乗客数約600名、乗務員定員約240名のこの客船の設備はかなり充実しており、洋上で退屈させないように気配りが配慮されている。船内の内容は大きなメインダイニングルームにメインラウンジ、トップラウンジ、シアター、展望浴室、プールにジム、カードルームにびいなすサロン、美容室、理髪室やマッサージ、茶室など日常生活や楽しむ為の設備は全て完備という感じであった。船上での娯楽は時間帯に配慮されている。ダンスタイムの時間や教室、ビンゴゲーム大会、ショー、映画やマジック、音楽会等エンターテイメント、デッキゲームやモーニングウォーク等の指導やカルチャー教室カラオケ等、食事も豪華で同じものを出さない配慮で夜食を付けて1日4食、至れり尽くせりであった。
 乗船後最初からの様子を記して見ると、まず初めに離船時の送別客とのテープ投げや船上セレモニーがあった後、非常時の訓練があった。全員甲板に出て、避難訓練の説明と装備の装着である。各部屋に備付の浮輪でなく浮着衣を身につけ甲板に出る。各部屋ごとに別れた乗客は決められた救命ボートに乗る前までの訓練である。又、装備で海に放り出された時の点滅する電燈と小さな笛を説明。「タイタニック」号の映画を3回も見た私はやけに感傷的になった。この客船は横浜港を出てから太平洋に出るが近海は結構、揺れた。台風の後でもあったのか、震度1.5又2.0ぐらいの横揺れが続くような感じかも知れない。廊下も手摺りが必要なぐらいの時もあった。
 1日のイベントスケジュールは、いくつかあり、好きなイベントに参加出来るが、時間の配分が上手く出来ており、次から次へと飽かさせない。時々、イベントの案内をする船内アナウンスがあり気配りされている。
 4日間あるから本でもと2冊程持参したが、全く読む事が出来なかった。私が特に感動したのは、瀬戸内海3橋のクルーズである。そして午前1時頃通過の関門橋も感動した。
 3日目午前8時神戸港を出港してから、約1時間後の午前9時頃、船内放送があって船長よりまもなく明石海峡大橋を通過するという。乗客のほどんどが、甲板や船上に出て通過を待ち構えていた。この大型客船が通過する光景は下から見ても橋の上から見ても、様になる絵になる風景だと思うし、感動だった。見えてから通過するまでは時間がちょっと長かったように思ったが、真下に来るとアット言う間に過ぎた。
 午前9時頃明石海峡大橋通過後、約4時間30分後の1時30分頃瀬戸大橋の通過となった。横浜ベイブリッジに似た橋で、かなり規模が大きく壮観だった。
 その後約3時間後四国への三橋大橋来島海峡大橋を通過する。
 この瀬戸内海の大型船の就航は島々が多く大変狭い所もあって難しいと言う。太平洋など広々とした所では副船長の代行もあると言うが、この瀬戸内海だけは船長自身がカジをとっていると本人から説明があった。
 明石海峡大橋の通過が朝の9時過ぎ、瀬戸大橋が4〜5時間後の午後1時半頃、来島大橋までが約3時間後の夕方5時過ぎ、そして約7時間後の深夜1時前に関門大橋と四橋の通過であった。
 深夜関門大橋を通過し、東シナ海に出て4時間ぐらい航行し、博多沖で4〜5時間停泊した。その停泊時に揺れが大きくかなりの人が船酔いをした。台風シーズンでもあったのか、東シナ海は大変波が高かった。
 平成24年の6月関門大橋のすぐ近くに日清講和条約が調印された場所に今は高級料亭「春帆楼」があり、ここで食事会があった。この時、次々に通過する大型船小型船を眺めていた。船上からこの「春帆楼」を眺めたらすばらしいと思っていたので大変期待していた。深夜1時でははっきり見ることは出来ないが暗がりのネオンの明りでうっすらと浮き上って春帆楼を見ることが出来た。そんな気持ちで、真夜中の風に吹かれながら、しばし思いにふけり、大変感動した。
 乗客客室についてふれて見る。
 全室が個室であり、連絡船などのような大衆客室はない。客室の種類は9段階ある。ロイヤルスイートA、ロイヤルスイートB、スイート、デラックス、ステートE・F・H・G・Jの個室で全部料金は違っていた。
 ステート室は部屋数も多いが、販売は高い部屋から満室になったようである。
 乗船の条件は3つある。金がかかること。時間に余裕があるか、時間を作れる人。それに船に酔わない人で楽しめる人。この条件がかなわないと難しい事になる。
 今回のこの船の客質を私なりに観察したところによると、女性は3分の2以上で、ペアーの他は中年の友達同志のOLもかなりいた。主人を亡くしたご婦人が1人参加も目立った。男性1人参加は少々か。夫婦は高齢者が多くどの組もご婦人がリードしていた。OLの様子を見ると60才を過ぎた独身女性と思う。これから少しは楽しもうと言う人達ではないかと思う。夜のディナーの時はすきなだけ、おもいきり着飾って下さいと主催者は言う。一番目立ったのはやっぱり、夫婦で参加の年配のご婦人だったようだ。3日間着かえ取りかえだった人。年配の独身女性は意外に地味だったように思う。中には、夫婦参加でありながら、旦那そっちのけに一人で飛び廻っているご婦人も見かけた。外部と遮断された船の中で4〜5日も一緒にいれば、だいたいわかって来る。世の中にはいろいろな人がいるものだと感心したりおかしくなったり、こんな事を観察するのも船の中ではの発見や楽しみ方でもある。
 オプションとして神戸港中突堤旅客ターミナルに入港し、市内見学等の様子を記して見る。
 神戸港には午後1時頃に入港した。30分後下船しそれぞれのオプションツアーに参加した。約4時間の滞在時間に南京町や灘の酒蔵などをまわった後、六甲山の夜景ツアーに参加する。日本一と言われる、六甲山からの夜景は天気にめぐまれ見ごとな夜景だった。その夜は神戸港船中泊で、波もなく静かな一夜だった。翌朝午前8時出港だが、出船時、神戸市消防音楽隊演奏による見送りがあった。これも感動でした。
 船の構造についてちょっと説明しておく。2万6千トンものこの「ぱしふぃっくびいなす号」は12階建て、最上階の12階はサンデッキがあり、トップラウンジでゲームコーナーがあった。そして11階はプール、プールサイドデッキ、展望浴室・スチームサウナ、サロンやラウンジ、ジムルームがあった。10階から客室でロイヤルスイート室があり、後方にはスポーツデッキがついている。9階には客室デラックスルームがあって後方に広いダンスなど出来るメインホールがあった。8階からステートルームになり、後方に大勢の入れるメインホールがあって大きなイベントはここでやった。
 7階は、客室がなく、メインレストラン、メインダイニングルーム、オープンバー、ショップ、ラウンジ、サロンなど娯楽施設、エントランスロビーがあり、7階で過ごすことが多かった。6階・5階はほとんどがステートの客室で6階にのみ一部シアタールームがあった。4階に美容室や散髪屋、事務室等があり3階2階1階は公開していないのでわからない。
 総合して感想を記して見る。
 神戸から別府までの連絡船や、芝浦から伊豆七島の連絡船には何度か乗船したことはあるが、この度の乗船は始めてであり未経験であった。いろいろと渡される乗船前のパンフや連絡、乗船前の説明会などで始めてだけにかなり、テンションは上がっていた。
 そしていよいよ乗船で横浜港についた時はやっぱり上機嫌ではらはらした。そして船上の感動は何んとも言えなかった。船上から送ってくれる人達へワインを片手にテープを投げる時の気持は又格別であった。投げても投げても陸に届かない。
 十人十色だから、その人の気持ちにもよると思うが楽しい時の時間はあっという間に過ぎる。この何日間、本を手にする暇もなく過ぎてしまった。想像したよりも現実ははるかに楽しかったように思う。

 幅の広い人間になるには、
(1)本を多く読むこと
(2)人の話をよく聞くこと
(3)旅に出ること

 このようなことが人間を大きくし、質を高め、自分に投資して、豊かな人間になる。このような船旅の経験も又すばらしい人間形成に役立つ事かも知れない。

日本クルーズ客船株式会社
「ぱしふぃっくびいなす号」(2万6千トン)
船長 恒川郁雄
機関長 阿部 修
ホテルマネージャー 阿部誠一郎

平成25年3月3日記


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