東京木材問屋協同組合


文苑 随想

材木屋とエコ 環境 省エネ(第27回)

クローズアップ現代「都市の木造化」

(株)コバリン 奥澤 康文
http://www.kobarin.co.jp


【NHK:進む都市の“木造化”林業再生への挑戦】 4月18日(木)午後7:30〜8:00。ゴールデンタイムに木材関係の番組が放映されるのは珍しい。冒頭、日本初の大型木造ショッピングセンターが横浜市に誕生する場面には驚いた。木材の弱点である耐火性が大幅に改善され、1000゜Cの熱でも内部の燃えない柱ができた。欧州は石の建造物だと思っていたが、大型木造建造物の普及が進んでいることもわかった。日本林業の活性化には、搬出やコスト等の課題も多いが、具体的な可能性が見えてきた感がする。前向きな内容であり、とても良かったと思う。

 

右は横浜のセンター南駅前、今年9月に完成予定の大型木造ショッピングセンター「サウスウッド」。圧倒的な大きさにビックリ。全長12mの国産カラマツを柱に使用。2〜4階部分の建物を支える構造材に、従来の鉄筋コンクリートに代わり木材を使用。(施工:竹中工務店)
木材でありながら火が自然に消える耐火集成材「燃ウッド」(斉藤木材工業(株):長野県)を使用。出来上がったら見に行きたい!

左は、司会の国谷さんと安藤氏(東京大学大学院特任教授)。国谷さんが一般の視聴者の立場から、多くの疑問を投げかけ、安藤氏が懇切丁寧に解説した。この種の番組はもっとやって欲しい!
木を活用する鍵となったのが、建築材料として木の最大の弱点を克服する耐火技術の開発だった。
日本は国土の67%が森林。戦後、積極的に造林した結果、木材総蓄積量が約50億m2に増加。搬出やコストの問題があるが、次なるステップに進む時が来た。

太平洋戦争中、都市部の大型木造建造物は燃えやすく被害を増大させた為、建築基準法(1950年)で、高さ13m以上の木造建築物は長い間禁止となっていた。これは知りませんでした。

しかし、木造の耐火技術向上により、公共建物の木材利用促進法が施行(2010年)、追い風となる。又、欧米でも、従来のコンクリート建築から、大型木造建築への回帰が進展。我々の木材業界には歓迎出来ることで素晴らしいと思う。

左は(株)シェルター(山形市)社長の木村一義氏。(平成25年度春の黄綬褒章受章) 同社の原点は山形県寒河江市。40年前、独特な接合金物構法(KES)を開発。大型木造建造物を多く手掛けてきたパイオニアで、過去10年で500件以上の実績を有する。
温厚な顔の裏に、東北の厳しい自然環境の中、独創力と知恵を巡らし今日を築いた自信と風格を感じる。過去の震災等での業績で躍進中。熱く語る夢は、世界にどこにもない「木造都市」を目指す。

右は大手メーカーの長年にわたる耐火実験の結果、十分な耐火性能をもつ木材が開発された。外側は炭化しているが、中は無傷であり十分な強度を維持。耐火性を向上させることで、将来、10階建てを超えるような高層建築物も可能性が見えてきた。

柱や梁(ハリ)に使用されるのは、火災になっても火が自然に消える特殊な加工が施されている。柱が3層構造になっている。スゴイ技術だ!

左は集成材。これを活用することで、様々な大きさや形状の大型木造建築物の可能性を拡げる。
鉄やコンクリート等の工業製品さながらの精度や強度があり、耐震性能を科学的に解析できるという。木ならではの美しいデザイン性がある設計が可能になった。
木と同じように、しなやかに揺れを逃がす耐震性があり、容易に壊せるという木の特性を生かして、部分的な建て替えが可能になるという。

右は木材を利用した曲線的、不思議な空間。木材独特なやわらかさが伝わって来る。何やら、タイムマシンのような、異次元の未来空間の様にも感じる。場所はどこだろうか?

近年、欧州でも、石から木へ転換する動きも活発化しているとの事。森林の蓄積が豊富になり、都市の中に炭素の蓄積が可能になる。
■ 木材は加工コストやメンテ等に優れ、最適な省エネ材料で多くのメリットが見い出される。

左図は、宮城県栗原市の栗駒総合支所。震災前にKES工法で建設したが、周囲では被害が大きかったが、損傷がなく震災後の避難場所や活動拠点になった。

震災後、地方自治体等から問い合わせが増加。南陽市(山形県)の塩田市長も「同じ金額であれば、地元に少しでも残る、或いは継続して地元の雇用につながる方がいい」と地産地消方式を強調する。


右は安達氏((株)シェルター取締役)。精力的な活動をしている。熟練工がいなくても、単純で木の傷みも少なく、工期を短縮し安くできるという。

地元の木材で、地元の建設業者にやらせることで、林業と地元産業の活性化につながる。今迄は、山間部の林業、伐採・搬出、加工等が分離され効率が悪かった。同社が仲介役となり、地域産材の性質や製材所の加工技術を確認しながら建物の設計・施工を行う。斬新で評価できる。

左は米沢地方森林組合の組合長の川合氏。近年、このままでは山が壊れてしまうとの危機感は強い。故に、「都市の木造化」に期待する。過疎化が進む農山村で、新たな雇用や発展が見込まれる意義は大であると力説する。

地元の大工さんや左官屋さん等の雇用もでき、地元にお金が還元される。林業の活性化にもなり、大きな期待を持ってみている。山形県だけでなく、ジワジワと全国へ波及している。


右は佐野氏(住友林業(株)木化推進担当のマネジャー)長年の経験を持つ大手のゼネコンの立場からも、推進の意義は大きいと指摘。日本全体の木材の使用量増加で、林業の活性化にもつながる。

従来、太陽光発電パネルには、鉄骨の架台が普通であったが、これを木造の架台に変えることにも取り組んでいる。こうした大手の木材使用量増加も、日本の林業に好ましいことだと思う。

木を軸にした、「木化都市構想」で、木質バイオマス構想の活性化を目指すことは素晴らしい。又、木の温もりや癒し効果で、更には「医療エコツーリズム」も活発に推進する計画もある。

今迄は設計者も施工者も、材料である「木」のことをよく知らないこともあった。地域の中と外を上手く連携し、木材の活用を図る。持続可能な国土と社会を両輪として林業の再生を図る。

農業や林業も課題が山積しているが、左の様なフローを書くことで、問題がよりはっきりする。

 

 

【林業とエコツーリズムの会合】 4月26日(金)晩、門前仲町で少数関係者との会合を持った。上述した「クローズアップ現代」の話題も出て大いに盛り上がった。依然、多くの課題があるが、新たな可能性の萌芽も楽しみになった。個々の力は小さいが、旨く連携できれば新たな可能性も生まれる。SNSの活用等を含め有意義な情報交換をした。

 

【富士山の世界遺産登録】 4月末、ビッグニュースが舞い込んだ。登録を実現するために、ごみの削減や保全の意義の強調だけでなく、付近の建築物の外観を木造や自然素材へ転換した画像も放映された。三保の松原が外された一因が海岸線の防波堤のコンクリート製のテトラポットだった。20世紀の高度成長期には人工物がもてはやされたが、最近ではすっかり木材等の環境にやさしいものが評価される時代になった。今後もこの傾向は加速するだろうし、大いに歓迎できる。

 

【高校同窓会の観桜会】 4月6日(土)昼 ホテルグランドパレス(九段下)で開催。

締めの挨拶は、昭和20年卒(旧制中学)の大先輩。 来年が米寿(88歳)、元気一杯の増田甚平さん。 桜は散った後だったが、郷愁に浸り楽しい一時。

終了後、ロビーで記念撮影。男子校なので少しさびしいのかな? 私はまだ若い方。みんなに木材や自然素材の良さをPRしています。

 

2013年5月4日(土) 記


前のページに戻る

Copyright (C) Tokyo Mokuzai Tonya Kyoudou Kumiai 2013