『歴史探訪』(112)

江戸川木材工業株式会社
常務取締役　清水　太郎

※天保期の掛樋（江戸名所図会）

※関口大洗堰（江戸名所図会）

1.井の頭池〜夕焼け橋 (井の頭公園はJR中央線/京王井の頭線・吉祥寺駅から5分)

2.面影橋〜駒塚橋 (面影橋は都電荒川線・面影橋電停下車または�燗c馬場駅から15分)

3.駒塚橋〜古川橋 (駒塚橋は東京メトロ有楽町線・江戸川橋駅または東京メトロ東西線・早稲田駅から各10分)

4.江戸川橋〜安藤坂下 (江戸川橋は東京メトロ有楽町線・江戸川橋駅下車)

※安藤坂下〜掛樋跡碑 (安藤坂はJR総武線都営地下鉄大江戸線・飯田橋駅から8分)

　　先日、東海道ネットワークの会から例会のお報らせが届きました。同会は今年の3月を以って休会になる予定でありましたが、それを惜しむ会員の声と、秋庭会長のリーダーシップによって、不死鳥のように蘇りました。
　例会の予定日が生憎く身内のお祝い事と重なり出席は断念致しましたが、例会のテーマが「水の道（神田上水）を歩こう」となっており、案内人が21年3月の例会で「谷根千の町並みを訪ねて下町気分を満喫しよう」と云うテーマで先達の労をとって下さった大松騏一氏でありました。
　今回は例会には出席できないものの、案内の2頁にある『神田上水のあらまし』と以前購入した大松氏が著した『神田川再発見』を頼りに歴史探訪します。
　神田上水は日本で最初に造られた水道であります。天正18年（1590）、小田原攻めの功によって関東の大守に任じられた徳川家康が江戸に入府するに先立って、家臣の大久保藤五郎（主水忠行）に命じて造らせました。（当初は小石川上水と呼ばれた）完成は慶長年間（1596〜1615年）家康の没後で、三代将軍家光によって「神田上水」と命名されました。
　水源は井の頭池（三鷹市）の西北端にある湧水「お茶の水」です。水は井の頭池から18km下流（文京区関口）まで流れ、ここで「大洗堰が設けられました。例会日の最初の見学地江戸川公園まで出掛けて見ました。
　有楽町線の江戸川橋駅で降り、西端の出口を出ますと、神田川に江戸川橋が架かっています。川に沿って遊歩道があり、一休橋を経て大滝橋を渡りますと江戸川公園に出ます。
　何故大洗堰が設けられたかと云えば、川巾いっぱいに堰を設け、水位を上げて、神田上水により出来るだけ多くの水を遠くまで送る為であります。堰から溢れた水が神田川に滝のように大きな音を立てて落ちていたので上に架けた橋は大滝橋と命名されました。
　神田上水と川を区別する為に、堰下から飯田橋駅近くの船河原橋までを江戸川、船河原橋から柳橋までを神田川・外濠と呼んでおりました。昭和40年（1965）、河川法が改正され、以後、井の頭〜柳橋まですべてが神田川の名で統一されました。これによって「江戸川」は消滅しましたが、今も江戸川橋、江戸川公園、江戸川橋駅などに名が残されております。
　更に西へ歩きますと、駒塚橋の畔、胸突坂の途中に関口芭蕉庵があります。芭蕉は上野藤堂藩の藩士として、深川に移る前の4年間河川改修工事の監督として住んでいたことがあり、住まいとまわりの庭一帯を関口芭蕉庵と呼ばれておりました。
　江戸川橋まで戻り、橋を渡って右の路地に入りますと、素掘りであった神田上水を明治初期に石蓋で覆って保護した様が石で巻いたような姿だと云うので巻石通りと呼ばれました。この通りは寺の多い道で、安藤坂までの間、10の寺院、3つの坂（鷺坂、大日坂、服部坂）が平行して流れている神田川には10の橋が架かっています。掘に積む石を切った跡には石切橋、徳川慶喜終焉の地もあり、それぞれ由緒があるのでしょうが、歴史の宝庫のような道ではないでしょうか。今では道巾は広がり、歩道を初老の歴史探訪グループが列をなして歩き、明日の統一地方選に備えて候補者の宣伝カーが行き交っています。
　神田上水は安藤坂を横切り、牛天神下から小石川後楽園の水戸藩上屋敷を経て、東京ドームの北側をまわって、白山通りを右折、水道橋駅付近で外堀通りを左折、御茶の水方面に上る坂の途中に掛樋跡碑があります。ここで水は掛樋で神田川の上を越え、江戸市中へ給水されておりました。伏樋の総延長は67kmありました。
　江戸の人口は急激に増え、当時世界最大の百万に届く勢いでありました。江戸幕府は人口対策として新たに多摩川に水源を求め、玉川兄弟に命じて、1650年頃、開府50年にして玉川上水を完成させました。