東京木材問屋協同組合


文苑 随想


『歴史探訪』(115)

江戸川木材工業株式会社
取締役 清水 太郎

 最近ある目的で、木材供給量について調べておりましたら、2015年4月7日付『日刊木材新聞』に「木材供給量と木材自給率の推移」が掲載されておりました。国産材、輸入丸太、輸入製品別に棒グラフで示されております。

 

木材供給は日本経済の大きな要素を占める住宅着工戸数と密接な関係があり、これらの表と学友O氏にもらった1958年以降の世界日本の歴史を見比べながら、歴史探訪します。
 木材の輸入が始ったのは1960年以降で当時の住宅着工戸数は年間42万4,000戸でありました。1950年6月朝鮮戦争が勃発し、7月から特需が起こりました。
 1960年、安保闘争で岸内閣が倒れ、池田内閣が「所得倍増論」を掲げて登場しました。
 日本経済は高度成長期に入り、1964年東京五輪が開催され、復興を内外にアピールしました。東海道新幹線が開通、夢の超特急と云われました。1970年、大阪万博開催、輸入丸太と製品は56,438千m2で、国産材供給46,241千m2を大きく越しました。住宅着工は148万5,000戸を数え68年100万戸突破後6年連続前年比増となりました。1971年、美濃部知事が「東京ゴミ戦争宣言」、1972年、沖縄返還を花道に佐藤内閣退陣、「日本列島改造論」を掲げて田中内閣が登場、訪中を断行、日中国交樹立を果たしました。土地ブームが興りました。1972年、住宅着工180万8,000戸、1973年、未曾有の190万5,000戸を達成しました。輸入木材が増え、国産材、輸入製品と合わせ木材供給は11,758万m2、自給率は約35%でありました。

1974年、ツーバイフォー工法がオープン化されました。三井物産の指導により、ツーバイフォーの研修と建売り向けに新プラン開発と、部材発注の為渡米したとき、ウォータゲート事件でニクソン大統領が辞任しました。
 木場移転が始まり、深川から新木場へ約600の企業が移転、跡地は防災拠点を兼ねた木場公園になりました。これは昭和34年(1956)伊勢湾台風で死者5,000人を出し、これを契機に、ゼロメートル地帯の深川から新木場へ移転の機運が起り20年以上かけて実現しました。
1979年、英国で鉄の女サッチャー首相登場し、停滞していた英国経済に喝を入れました。
1980年、モスクワ五輪、日本はソ連のアフガニスタン侵攻に抗議し不参加。
1981年、レーガン大統領就任、米経済再建計画(レーガノミクス)−32年後のアベノミクスの元祖。
1987年、東京地価上昇率、前年比76%
1988年、景気上昇、株価3万円。
1989年、ベルリンの壁崩壊、株価3万9,000円。
1990年、東西ドイツ統一国家に。
輸入製品増え、輸入丸太減り、住宅着工は2000年まで160万〜120万の間を上下。
1991年、バブル崩壊 この後失なわれた20年に突入。
1992年、バルセロナ五輪、岩崎金、有森銀 都市銀行21行の不良債権12.3兆円
1994年、松本サリン事件、価格破壊、景気対策15兆円
1995年、阪神淡路大震災6,500人死亡
1996年、橋本龍太郎内閣発足 アトランタ五輪。有森銅「自分を誉めたい」
1997年、拓銀、山一證券倒産。地球温暖化防止京都会議。GDP23年振りマイナス成長−0.7%
1998年、失業率急上昇。
1999年、世界の人口60億人 石原慎太郎都知事に
2000年、木材供給1億m2、国産材1,800m2 自給率18%
シドニー五輪 田村、井上、高橋金
2001年、小泉政権発足構造改革スタート、デフレ進行、失業率5%台、倒産相次ぐ。
2002年、世界同時株安、世界的IT不況 小泉首相訪朝拉致被害者5人帰国。失業率5.5%
2004年、テロ、紛争続発 アテネ五輪、北島、野口金、新潟中越地震 三菱UFJ銀行経営統一へ
2005年、愛知万博2,200万人、姉歯耐震偽装マンション発覚
2007年、サブプライム・ローン問題 原油価格急騰バレル100ドル 消えた年金問題で国民の怒り爆発
2008年、オバマ黒人初の大統領に 日経平均株価7,162円 1982年以来の低水準に
2009年、衆院選民主圧勝、歴史的政権交代 住宅着工79万戸 42年振り100万戸割る
2010年、上海万博7,300万人入場 尖閣問題
住宅着工低迷81万戸 2013年まで80万戸台
2011年、世界人口70億人へ 東日本大震災、死者不明2万人、スカイツリー634m世界一、なでしこジャパン世界一
2012年、東京駅保存・復元工事完成 ロンドン五輪史上最多メダル38個 衆院選自公圧勝
2013年、アベノミクスで円安、株高に

 住宅着工は83万戸(ピーク比56%)と低迷しておりますが木材消費は7,063万m2で自給率は28%まで回復、輸入製材(約4,500m2)、輸入丸太(約520m2)で着工減(−5.6%)ほど減っていない(−40%)のは新築住宅以外にリフォーム需要や住宅以外の木造建築が増えている為と思われます。

※下記の表を参照


 それでは将来の木材供給と住宅着工はどのように推移して行くのでしょうか。ある統計予測によれば住宅着工戸数は年間50万戸まで下る。その時期を2050年と仮定し、私の無責任な仮説によれば下記のようになります。
住宅着工 2040年 55万戸
  2050年 50万戸

 

      輸入製材 国産材 自給率
木材供給 2040年 6,000万m2 3,600万 2,400万 40%
  2050年 5,500万m2 2,750万 2,750万 50%

 

年度別住宅着工戸数(1960年〜2013年)
1960年 昭和35年 42.4万戸
65 40 84.3
66 41 85.7
67 42 99.1
68 43 120.2
69 44 134.7
70 45 148.5
71 46 146.4
72 47 180.8
73 48 190.5
74 49 131.6
75 50 135.6
76 51 152.4
77 52 150.8
78 53 154.9
79 54 149.3
80 55 126.9
81 56 115.2
82 57 114.6
83 58 113.7
84 59 118.7
85 60 123.6
86 61 136.5
87 62 167.4
88 63 168.5
89 平成元年 166.3
90 2 170.7
91 3 137.0
92 4 140.3
93 5 148.6
94 6 157.0
95 7 147.0
96 8 164.3
97 9 138.7
98 10 119.8
99 11 121.5
2000 12 121.0
1 13 117.0
2 14 114.0
3 15 117.0
4 16 119.0
5 17 123.0
6 18 129.0
7 19 106.0
8 20 109.0
9 21 79.0
10 22 81.0
11 23 83.0
12 24 88.0
13 25 83.0
出所:国土交通省他

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