東京木材問屋協同組合


文苑 随想

見たり,聞いたり,探ったり No.191

〜歴史探訪 一人旅〜
海上自衛隊「観艦式」に乗船
(原子力空母ロナルド・レーガンも参加)
青木行雄

 平成27年度の自衛隊記念行事の本番、海上自衛隊の観艦式は、平成27年10月18日に相模湾沖で行われた。


※潜水艦乗員の救助を目的とした、深海救難艇を搭載し、
医療設備も完備した潜水艦救難母艦。私達が乗船した船
 今回の集合艦船は中国の尖閣諸島の問題や北朝鮮のミサイル発射等の問題があって、参加船が少なく36艦船程の出場であったという。
 乗船場所は東京湾近郊の港から分乗して、乗船し、相模湾に集合することになるが、横須賀港からが一番多く、一艦船の乗客は350人位との事であった。
 私達が乗船した船は横浜新港からで自衛隊が所有する船の中では大型船で、潜水艦乗員の救出を目的とした、深海救難艇を搭載し、医療設備も完備した潜水艦救難母艦であった為、当日の乗客は950人で、船内は大変な混雑で、全員に救難具と毛布が用意されていた。

観艦式の歴史について

1.起源
 観艦式の起源は、1341年(歴応4年)、英仏戦争の時、英国王エドワード3世が自ら艦隊を率いて出撃する際に、その威容を観閲したことに始まるといわれているようだ。

2.帝国海軍
 我が国では、1868年(明治元年)天皇陛下をお迎えし、大阪・天保山沖で実施された観兵式(軍艦叡覧)が観艦式のはじまりであり、当時の兵力は6隻2,452トンにすぎなかったと言う。
 「観艦式」という言葉が最初に使われたのは、第4回目にあたる1900年(明治33年)神戸沖で行われた大演習観艦式だと言う。
 帝国海軍最後の第19回観艦式は、1940年(昭和15年)横浜沖において実施された紀元2600年特別観艦式であり、艦艇98隻622,000トン、航空機527機が参加した極めて壮大なものであったと言われる。

3.海上自衛隊
 (1)自衛隊記念日記念行事としての観艦式
 1956年(昭和31年)に「自衛隊記念日」が定められ、翌1957年(昭和32年)に自衛隊記念日記念行事の一環として観艦式を実施することとされたと言う。
 ご存じのように日本の自衛隊には陸・海・空と3隊あって、今は大行事を3交代で開催している。平成27年は海上自衛隊が担当で最近は相模湾が多いようである。
 今回は外国船も多く見られ圧巻だった。

 観艦式に協力された外国艦隊は、アメリカ、オーストラリア、フランス、インド、韓国の5ヵ国でパンフには招待国海軍と書かれている。特にアメリカの原子力空母「ロナルド・レーガン」は圧巻で見るからに重圧があってすごかった。我々の艦船からかなり遠望だったが、望遠鏡で見ても、かなり大きく、甲板にジェット機が多数並んでいるのが良く見えた。

 まず、艦艇の観閲と祝賀航行、列を組んで航行する艦艇は初めて見る方にはすごくてすばらしいと思うと同時に、異様な感じがすると思う。コンピューターで制御された船間は見事と言える。そして外国艦艇6隻が祝賀航行した。
 次に航空機の観閲・祝賀飛行。
 海上自衛隊16機、陸上自衛隊4機、航空自衛隊6機の他計36機が、船上を順次飛来し、観閲を受け、米軍機2機も祝賀飛行した。

 そして護衛艦「しまかぜ」が観艦式を祝い空砲を発射した。
 そして護衛艦数隻で一斉に方向を変える。戦術運動も披露した。
 続いて、潜水艦の潜航・浮上の披露、潜水艦2隻が潜航・浮上を2回繰り返しながら航行した。大きなクジラが顔を見せたり、背中を出したりの感もあった。

 

※連隊を組んで進行する自衛隊船。コンピューターによる同間隔での進行は見事だ。

※「しまゆき」型、護衛艦。次代を担う隊員を育成する航海実習に力を発揮している護衛艦である。

 前記にも紹介したがアメリカの原子力空母「ロナルド・レーガン」の詳細を記して見ると、アメリカでは大型船空母には歴代の大統領の名前をつけることが多いと聞くが、今回参加したこの「ロナルド・レーガン」は進水が2001年(平成13年)で、排水量101,429トンと言うからバカでかい空母である。そして全長が333mと言う。そして幅76.8m、なんと兵員3,200人、航空要員2,480人と言い計5,680人もの要員の乗船と言うから、納得である。そして搭載飛行機なんと90機も待機していると言う。そして走行時速は30ノット(56km)と言われる。

 私達が乗船した「ちはや」潜水艦救難艦は広島の「呉」所属の艦船でこの観艦式の為に来船した。
 「ちはや」を少々解説したい。
 基準排水量は5,450t、乗員126名と言う。
 全長は128mで、幅は20m、速力21kt。

 平成12年3月に就役し、平成23年6月〜7月には東日本大震災で三陸沖で活躍したという。
 そもそも、この「ちはや」は遭難(事故)潜水艦から乗員を救出することを主任務とする潜水艦救難艦である。潜水艦救難特有の深海救難艇、深海潜水装置のほか、無人潜水装置、医療設備等、他の艦船ではあまり見られない装備を保有している船である。

※空母「ロナルド・レーガン」。飛行機90機搭載。5,680人もの兵員を乗せ56kmの時速と言う。約10万トン級の空母である。すごい。

※この艦は字のごとく潜水艦救難艦「ちはや」で、他艦と違い設備も複雑である。

 (1)無人潜水装置
 海底の状況の調査、サンプル採取及び遺失物の調査・回収等を艦上から遠隔操作で行う。  最大深度2,000m、水中速力2kt。

 (2)深海潜水装置
 ダイバー(潜水員)を水中に輸送し、深度450mまでの海中作業が出来る。

 (3)深海救難艇
 小型の潜水艦により遭難(事故)潜水艦から乗員を救出する。
 全長12.4m、排水量40t、水中速力4kt、収容人員12名

 航空機も我々の上空へ、船上から観閲、13時頃から哨戒機P−3C。3機が対潜爆弾4発ずつ計12発を高度200ft(約60m)で海面に投下した。又、哨戒機P−1、2機が1Rフレアーを高度500ft(約150m)・600ft(約180m)でそれぞれ射出した。又ブルーインパルス飛行など展示した。よく見る飛行機雲という白いものを連隊で引きながら飛行した。

※見えるのが深海救難艇で、遭難(事故)潜水艦から乗員を救出するための艦である。

※横から見た、深海救難艇。

※拡大した深海救難艇のスクリューである。

 我々の乗船した「ちはや」の艦長からメッセージがあったので最後に記して終わりにする。
 「本日は、ようこそ潜水艦救難艦『ちはや』にご来艦くださいました。皆様のご来艦を乗員一同心から歓迎いたします。
 この『ちはや』は遭難(事故)潜水艦から乗員を救出することを主任務とする潜水艦救難艦です。潜水艦救難特有の深海救難艇、深海潜水装置のほか、無人潜水装置、医療設備等、他の艦船ではあまり見られない装備を保有しています。
 本日は、時間の許す限り艦内をご覧いただき『ちはや』と海上自衛隊に対するご理解をいただければ幸いに存じます。
 尚、ご質問等ございましたら、お近くの乗員にご遠慮なくお申しつけください。」

ちはや艦長

 10月18日の午前中、安倍晋三首相は神奈川県の米海軍横須賀基地に10月1日に配備された原子力空母「ロナルド・レーガン」に乗艦した。現職首相の空母への乗艦は初めてらしい。そして、その後、この観艦式に参加したのである。

※P−1、P−3C哨戒機。あらゆる情報をコンピューター処理する総合情報処理能力を有すると言う。

※新装備を搭載した最新鋭の潜水艦。

平成27年12月23日 記


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